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はじめての抗体標識プロトコル

はじめての抗体標識プロトコル

目次

I.はじめに
 
U.イムノアッセイの各手法の利点と欠点
 
V.何を標識するのか
 
IV.抗体のどこに標識するのか
 
V.どのようにして標識するのか
 
VI.どのようにして検出するのか
 
VU.フィルトレーションチューブを利用した反応・精製
 
VV.抗体へのビオチン標識方法
 
IX.抗体への酵素標識方法
 
X.抗体への蛍光色素標識方法
 
XI.抗体への蛍光タンパク質標識方法
 
XU.Fab' へのアルカリホスファターゼ標識方法
 
XV.関連技術紹介
 
XIV.関連製品
 
XV.参考文献



I.はじめに

 イムノアッセイは、免疫反応を利用して、微量物質の検出・定量を行う手法で、特異性が高く高感度な分析方法である。酵素免疫測定法(EIA: enzyme-immuno assay)、免疫染色法、イムノブロッティングなど応用の幅も広い。
ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay) は、EIA の中でも特によく用いられる手法である。これらの手法は、酵素反応や蛍光検出系を組み合わせることで、従来の手法でよく用いられた放射性物質を用いる必要がなく、取り扱いの制約や危険性も低い検出系として、よく利用されている。抗原と結合したモノクローナル抗体やポリクローナル抗体(一次抗体)を検出するには、標識された二次抗体を使用するのが一般的である。ビオチン、酵素、蛍光色素などが標識された二次抗体は、市販されていることが多く、使用者が使用する一次抗体に適した二次抗体を用いれば、吸光、蛍光、発光などの検出に応じた系を選択することが可能である。
 一方、酵素やビオチンなどを一次抗体に直接標識することが可能であれば、実験手順は簡略化され、さらに多重染色への発展、二次抗体の影響の回避など多くの利点がある。それにもかかわらず、一次抗体への直接標識法が広く普及していない背景には、標識操作の煩雑さや得られる標識抗体の活性低下などの問題点がある。抗体に直接標識する技術は研究室によっては実施しにくく敬遠される場合も多い1)
 しかし、特異性や活性を損なうことなく抗体へ直接標識することが簡便化されれば、先に述べたような利点を生かすことができる。また、抗体以外のタンパク質を同様に標識することができれば、この手法はタンパク質が関与する相互作用の解析など応用が可能である。
 本項では、小社のキットの原理を中心に、抗体の特異性を失うことなく抗体へ酵素(タンパク質)を簡便に標識できる方法や、その実験例などを初心者の方にも分かりやすくご紹介したい。


U. イムノアッセイの各手法の利点と欠点


1.

直接法

一次抗体に直接、蛍光色素や酵素を標識する方法。

 



2.

間接法

蛍光色素や酵素が標識された二次抗体を用いて、特異的に一次抗体を検出する方法。

 



3.

増感法

一次抗体(もしくは二次抗体)をビオチン化しておき、ビオチン- アビジン複合体を形成させて、検出する方法(ABC 法)がその一例である。蛍光物質や酵素で標識されたアビジン(もしくはストレプトアビジン)を用いることによって、検出感度が上昇する。

表1 各手法の利点と欠点
手法
利点
欠点
 直接法


実験手順を簡略化することができる。


多重染色を行う際、抗体の種を選ばなくても良い。


二次抗体の影響を回避することができる。


直接標識する手間が発生する。


標識操作によって、抗体活性を失活させる可能性がある。
 間接法


特異的一次抗体を検出するために標識二次抗体を統一して使用でき、汎用性が高い。


一次抗体に対して複数の二次抗体が反応するため、より増強されたシグナルが得られる。


二次抗体による非特異結合が生じる可能性がある。


多重染色を行う際、抗体の種を選ばなくても良い。


目的とする標識二次抗体が販売されていないことがある。
 増感法
( 主にABC 法について)
特異的一次抗体をビオチン化しておけば、状況に 応じて検出系を選択でき、汎用性が高い。
ビオチンは低分子であるので、抗体に複数個標識ができ高感度検出が可能である。


内因性ビオチンなどによる疑陽性化に注意が必要である。



V. 何を標識するのか

表2 各分析法における標識の種類
分析方法
標識分子の種類
ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)酵素標識
HRP( ペルオキシダーゼ) やALP( アルカリホスファターゼ) など
ビオチン標識※1
組織・細胞の免疫染色
ウエスタンブロッティング
酵素標識(HRP, ALP)
蛍光色素標識または、蛍光タンパク質標識※ 2
ビオチン標識※1
フローサイトメトリー蛍光色素標識または、蛍光タンパク質標識※ 3
ビオチン標識※1
in vivo イメージング近赤外蛍光色素(ICG など)

※ 1

酵素標識または蛍光標識アビジン(またはストレプトアビジン)が必要である。

※ 2

蛍光タンパク質は、測定対象波長域のフィルターへの蛍光の漏れ込みが起こりやすい為、多重染色を行う場合には蛍光色素の使用をお勧めする。

※ 3

蛍光タンパク質類は、蛍光色素に比べて蛍光強度が強く、蛍光波長が広いことからフローサイトメトリーで多く使用されている。
フローサイトメトリーで多重染色を行う場合、装置の蛍光漏れ込み補正(コンペンセーション)を実施することで、蛍光タンパク質の蛍光の漏れ込みを改善できる。



IV. 抗体のどこに標識するのか

1. 抗体の基本構造


IgG 抗体は同数のH 鎖(50 kDa:赤) とL 鎖(20 〜25 kDa:青) がそれぞれ2 本ずつジスルフィド結合(S-S 結合) しており、Y 字型の対称構造を呈している。

2. 標識対象の官能基
アミノ基(-NH2)は一般的なタンパク質や抗体には数多く存在するので、標識に利用しやすい。ただし、アスパラギンやグルタミン、アルギニンの側鎖のアミノ基は、アミド基、グアニジル基の一部で反応性が低く、標識の対象とはならない。
抗体のアミノ基の中で反応性が高いのは、リシン残基の側鎖アミノ基とタンパク質N 末端アミノ基であり、この部分が標識の対象となる(図3)。


 一方、スルフヒドリル基(-SH)はシステイン残基の側鎖の一部である。ただし、抗体中のシステイン残基はジスルフィド結合(-S-S-)を形成し、高次構造を保つのに利用されているので、そのまま標識に利用することは難しい。そのために、還元剤を用いてジスルフィド結合を還元し、SH 基として標識に使用する。ただし、抗体やタンパク質中のすべてのジスルフィド結合を還元すると、タンパク質の機能が失われる可能性があるので、一部のジスルフィド結合のみを還元し、機能を保持したまま標識部位として利用する。
この他にも、抗体の糖鎖を酸化してアルデヒド基(-CHO)を生成し、シッフ塩基結合によって標識に利用する方法もある。


V. どのようにして標識するのか

1. 抗体への低分子(蛍光色素、ビオチンなど)の標識方法
前述の通り、抗体への標識にはアミノ基(-NH2)が利用されることが多い。例えば、ビオチンを標識する場合は、ビオチン分子にアミノ基と反応する活性エステルを導入した化合物を使用する。アミノ基反応性活性エステルとしては、一般にN- ヒドロキシスクシンイミド活性エステル(NHS エステル)が用いられる。NHS エステルは、一級アミンとpH8付近で効率よく反応し、安定なアミド結合を形成する。pH7 付近では、アミノ基がプロトン化している割合が高く(-NH3+の構造をとっている)、反応性が低い(求核性が弱い)。一方、pH9 以上では、アミノ基のプロトン化の割合は低くなるが、NHS エステル自身の加水分解が進みやすく、反応効率が低くなる。



また、SH 基を標識に利用する場合は、マレイミド基を導入した低分子を使用する。マレイミド基は、抗体標識に適した以下の利点を有する2)

1) 反応条件が温和で、かつ反応収率も高い。
2) 反応がSH 基選択的で、中性pH 付近ではアミノ基に比べ約1,000 倍速く反応する。
3) マレイミド基とSH 基の反応により形成された結合は安定である。

ただし、マレイミド基は加水分解されやすいので、必ず中性pH 付近で反応を行い、pH を上げることは極力避けた方がよい。SH 基とマレイミド基との反応はpH6 〜 7 で十分に進行する。


2. 抗体へのタンパク質の標識方法 〜高分子標識の難しさ〜
低分子である蛍光色素やビオチンの抗体への標識は、前述の活性エステルを導入した試薬を用いれば、比較的容易に行える。しかし、酵素や蛍光タンパク質などの高分子を抗体に標識するのは、低分子標識とは異なった技術が要求される。特に、アミノ基を利用する方法は、標識する酵素や蛍光タンパク質の活性を保つ温和な条件で反応させる必要がある。さらに、抗体と同様に、酵素や蛍光タンパク質にもアミノ基が多数存在するので、酵素や蛍光タンパク質自身が重合するのを避けなければならない。そのために、後に述べる1) 過ヨウ素酸法や2) グルタルアルデヒド法は、抗体標識の経験がない研究者にとっては、実施しにくい方法である。これを改善するために、標識したい酵素や蛍光タンパク質が持つアミノ基と二価性試薬を反応させてマレイミドを導入し、抗体のジスルフィド結合を還元して得られるSH 基と反応させる3) マレイミド法が有効とされている。
 小社では、抗体と混合するだけで酵素や蛍光タンパク質の標識抗体を得ることができる技術、4)NHS 法を開発し、キット化することに成功した。本方法は、酵素や蛍光タンパク質にアミノ基反応性の官能基を組み込んでおり、簡便に目的の抗体(タンパク質)に酵素や蛍光タンパク質を標識することが可能である。本手法が、抗体(タンパク質)を直接標識したい研究者のお役に立てれば幸いである。


1) 過ヨウ素酸法
酵素の糖鎖部分を過ヨウ素酸で酸化し、アルデヒド基を導入する。酵素のアルデヒド基と抗体のアミノ基が反応して、シッフ塩基(CH=N)が形成される。このシッフ塩基は不安定な為、C=N 二重結合を還元する必要がある。しかし、還元剤処理は酵素や抗体の活性を低下させる可能性が高く、ペルオキシダーゼ(HRP)のような比較的化学修飾に強い酵素以外には、本手法の適応は難しい2)



2) グルタルアルデヒド法
酵素を過剰のグルタルアルデヒドで処理し、酵素にアルデヒド基を導入する。それ以後は、過ヨウ素酸法と同様に抗体のアミノ基と反応させ、還元剤で処理する。グルタルアルデヒドはタンパク質架橋剤、アミノ基修飾剤であるので、過剰のグルタルアルデヒド処理は、酵素の活性低下が起こる可能性が高く、注意が必要である。



3) マレイミド法
SH 基選択的な反応基としてマレイミドを有する架橋剤を用いる方法で、温和(中性pH 域)な条件で選択的な架橋ができる。生成する結合の安定性も高く、優れた標識法である。まず、架橋剤と酵素のアミノ基を反応させて、マレイミド基を導入する。抗体は予め還元剤で処理し、抗体中のジスルフィド結合(-S-S-)を解裂してSH 基を形成させたものを使用する。ただし、還元剤は抗体のヒンジ部のジスルフィド結合のみを特異的に還元する訳ではなく、実際は抗体の様々な部分のジスルフィド結合を還元する。マレイミド導入酵素と還元処理抗体とを反応させ、標識体を得る。本手法は、後に紹介するSH 基への標識キット原理に応用されている。
 また、IgG をペプシンで消化すると、Fc 部分が消化されてF(ab')2 が得られる。F(ab')2 は還元すると2 つのFab' に切り離される。Fab' は抗原結合部位の反対側のヒンジ部にSH 基を持っているので、Fab' にマレイミド法で標識することが可能である( 図17 参照)。Fab' を用いると抗体の活性を失うことなく、しかも非特異的吸着の少ない酵素標識Fab' を得ることができるという利点がある。一方、IgG をパパインで消化すると、ヒンジ部分も消化されてSH 基を持たないFab が得られる。Fab はSH 基がなく、マレイミド法で標識されないので、アミノ基を使った標識を行う必要がある。



4) NHS(N- ヒドロキシスクシンイミド)法
NHS によって酵素のカルボキシル基を選択的に活性化する方法である。小社では、酵素自身のアミノ基をキャッピングすることにより酵素自身の重合を防ぎ、安定なアミノ基反応性活性体を得ることに成功した。さらに、反応条件を最適化することにより、酵素の劣化を最小限に抑えている。NHS で活性化した酵素と抗体を反応する方法では、酵素と抗体は安定なアミド基で結合しているので、還元の必要はなく、比較的不安定なALP( アルカリホスファターゼ) にも適用が可能である。また、IgG 以外のタンパク質の多くはジスルフィド結合(-S-S-)によって高次構造を保っているので、還元剤の使用はタンパク質自体の機能を失う危険性を伴う。このような場合は、還元剤を使用せずに標識できるNHS 法を用いることにより、タンパク質を失活させることなく、標識体を得ることができる本手法は有効である。本手法は、後に紹介するアミノ基への標識キット原理に応用されている。




VI. どのようにして検出するのか

1. 酵素の特徴

EIA で主に用いられる酵素の特徴を以下に述べる。

表3 酵素の特徴比較
 酵素ペルオキシダーゼアルカリホスファターゼ
 略記HRP( horseradish peroxidase: 西洋わさびペルオキシダーゼ)
または POD(peroxidase)
ALP または AP、仔ウシ小腸由来の場合、CIAP と略記されることもある
 分子量(MW)約40,000約140,000
 反応基質+H2O2 → 酸化型色素+ 2H2Oリン酸エステル化合物を加水分解
 安定性強い比較的弱い
 基質の選択肢多い少ない
 阻害剤CN-, S2-, F-, N3- ( 保存剤のNaN3 に注意)リン酸塩など(リン酸緩衝液の使用に注意)
 選択の判断材料免疫染色の場合、内在性ペルオキシダーゼ活性の影響を受けることがある(パラフィン包埋切片では活性阻害を受ける為使用できるが、凍結切片では使用できない)内在性アルカリホスファターゼ活性が高い組織ではCIAP 標識抗体が使用される(CIAP 以外の内在性アルカリホスファターゼ活性はレバミソールによる阻害が可能な為)


2. 主な酵素標識抗体の検出試薬
EIA では、酵素に基質を加えて生成される色素を吸光(呈色)、蛍光または化学発光などで検出する。HRP の場合はTMB やDAB、ALP の場合はpNPP といった基質が一般的に利用されてきたが、近年はさまざまな種類の基質やキットが各社から発売されている。検出感度は「化学発光>蛍光>吸光(呈色)」の順に高いと言われている。研究者自身の検出系と求める感度を基に選択していただくとよい。

表4 各測定法に主に使用される検出基質
 
酵素
発色基質
蛍光基質
化学発光基質
 ELISA HRP


TMB (Tetramethylbenzidine) ※1


OPD (o-Phenylenediamine)


ABTS(2,2-Azinobis[3-ethylbenzothiazoline-
6-sulfonic acid])


Amplex®Red
ルミノール系(ECL)
 ALP


pNPP (p-Nitrophenylphosphate)


AttoPhos®


4-MUP(4-Methylumbellipheryl
phosphate)
ジオキセタン系
(CDP-StarTM,AMPPD®, CSPD®
 免疫染色 HRP


DAB (3,3’-Diaminobenzidine) ※1


TSA 法(Tyramide SignalAmplification)


HPPA(p-Hydroxyphenyl propionic acid)
-
 ALP


BCIP/NBT
(5-Bromo-4-chloro-3'-indolylphosphatase/ Nitroblue tetrazolium)
-
-
 ウエスタン
 ブロッティング
 HRP


TMB (Tetramethylbenzidine) ※1


DAB (3,3’-Diaminobenzidine) ※1
-
ルミノール系(ECL)
 ALP


BCIP/NBT


ECF


DDAO phosphate
ジオキセタン系
(CDP-StarTM,AMPPD®, CSPD®

※ 1 ELISA には水溶性の発色基質であるTMB がよく用いられる。DAB は非水溶性である為、ELISA にはあまり用いられない。


VU. フィルトレーションチューブを利用した反応・精製
小社のLabeling Kit は活性化試薬とフィルトレーションチューブ(分子分画30K)により抗体を簡便に標識できるように設計されている。活性化試薬は抗体(もしくは還元処理した抗体)を指定の緩衝液中で混合するだけで、抗体(もしくは還元処理した抗体)に標識することが可能である。活性化試薬は、50 〜 200 μg の抗体を標識する量に最適化されており、標識後に残ったビオチン化試薬や蛍光色素などの低分子試薬は、遠心操作により除去することが可能である。
一方、標識後に残った酵素や蛍光タンパク質などの高分子は、遠心により除去することはできないが、反応液中で活性基が加水分解されるため、その後のEIA には大きな影響を及ぼさないと考えられる。前処理― 反応― 精製までの全ての操作を一つのフィルトレーションチューブ上で行うことができ、いずれのキットを用いても概ね3 時間以内に標識体を得ることができる。







キットで使用しているフィルトレーションチューブには、30K の分子分画を持つフィルターが装着されている。低分子は、遠心操作によりフィルターを通過するが、抗体などの高分子はフィルターを通過しない。それ故、フィルター上で簡単・迅速に反応および精製を行うことができる。以降のページでは、小社の抗体標識キット(Labeling Kit シリーズ)を用いた標識方法、実験例および関連技術を紹介する。


VV. 抗体へのビオチン標識方法

1. 標識方法
操作上の注意点などの詳細については、取り扱い説明書をご参照いただきたい。なお、キットの取り扱い説明書は小社HP からダウンロードが可能である。


2. 標識例
Anti-Nitroguanosine monoclonal antibody(Clone#NO2G52) 50 μg をBiotin Labeling Kit - NH2 (Code: LK03) を用いてビオチン標識し、肺高血圧剤( モノクロタリン) を投与したラットの肺動脈凍結切片を染色した。肺動脈近傍で8- ニトログアノシンが検出されており、モノクロタリン投与により肺動脈周辺でひきおこされた炎症によるNO 産生が示唆された。



3. 関連技術紹介
1) 分子量50,000 以下のタンパク質へのビオチン標識
Z.フィルトレーションチューブを利用した反応・精製」で前述した通り、本キットでは30K の分画分子量を持つフィルトレーションチューブが装着されている。したがって、標識対象のタンパク質分子量は、50,000 以上と設定されている。分子量146,000 程度のIgG 抗体を標識する場合には何ら問題ないが、分子量50,000 以下のタンパク質のアミノ基に標識をする場合は、別途、分画分子量の小さいフィルトレーションチューブをご用意いただくことで、ビオチン標識が可能である。

<準備するもの>


Biotin Labeling Kit-NH2 (Code: LK03)


フィルトレーションチューブ(10K ※1) Pall 社 ナノセップ遠心ろ過デバイス(Pall 社Code: OD010C33)
※1 標識したいタンパク質の分子量によって、適当なものをご選択いただきたい。

<標識方法>
キットの取り扱い説明書に従って操作する(タンパク質量は50 〜 200 μg にする)。ただし、フィルトレーションチューブの分画分子量が小さくなると遠心時間が長くなる可能性があるので、液残りがある場合は遠心時間を延長する必要がある。遠心速度を上げることは、回収率の低下につながるので、お勧めしない。


IX. 抗体への酵素標識方法

1. Peroxidase Labeling Kit (HRP 標識キット)
1) 標識方法
操作上の注意点など詳細については、取り扱い説明書をご参照いただきたい。なお、キットの取り扱い説明書は小社HP からダウンロードが可能である。

2) EIA(Enzyme Immunoassay)への応用例
EIA への応用例として、ELISA 及びウエスタンブロッティングでの使用例を紹介する。Peroxidase Labeling Kit-NH2(Code: LK11) で標識した一次抗体を用いた直接法と、一次抗体と市販のHRP 標識二次抗体を用いた間接法をそれぞれ比較した。図9 はビオチン化BSA をプレートに固定し、HRP 標識抗ビオチン抗体を結合後、TMB 発色したELISAの結果である。抗ビオチン抗体とHRP 標識二次抗体を用いた間接法と比較すると、HRP 標識一次抗体を用いた直接法
はほぼ同等の感度を示した。図10 はリン酸化チロシンBSA のウエスタンブロッティングを同様に直接法と間接法で検出した結果である。間接法に比べ、直接法は同等以上の感度を示した。一般的に、二次抗体を用いた間接法は直接法の10 倍感度が高いと言われているが3)、本キットで作製した標識一次抗体を用いた直接法は間接法と同等以上の感度を示し、その有用性が示唆される。



3) 関連技術紹介

(1) 発色基質調製方法
A. DAB 溶液調製法


9 mg のDAB(Code: D006)を1 ml PBS に溶解し、100X DAB 溶液を調製する。


30% 過酸化水素5 μl を1 ml PBS で希釈し、200X 過酸化水素溶液を調製する。


10 μl の100X DAB 溶液と5 μl の200X 過酸化水素溶液を1 ml PBS で希釈し、染色溶液とする(染色溶液は保存できないので、用時調製すること)。

B. TMB 溶液調製法


6 mg のTMBZ(Code: T022) を1 ml DMSO に溶解し、100X TMBZ 溶液を調製する。


30% 過酸化水素5 μl を1 ml PBS で希釈し、200X 過酸化水素溶液を調製する。


10 μl の100X TMBZ 溶液と5 μl の200X 過酸化水素溶液を1 ml PBS で希釈し、TMB 溶液とする。

(2) HRP 標識抗体の精製方法
酵素標識された抗体を用いて免疫染色を行った際など、未反応のペルオキシダーゼが非特異吸着の要因となることがある。その際は、小社IgG 精製キット(Code: AP01, AP02)を用いてHRP 標識抗体を精製することによって、バックグラウンドの上昇を抑えることが期待できる。図11 に、小社IgG Purification Kit を用いて、精製したペルオキシダーゼ-IgG のHPLC チャートを示した。未反応のペルオキシダーゼが標識抗体溶液から分離されたことが確認できる。
ただし、本方法は安定な酵素であるペルオキシダーゼに対し可能な方法である。比較的安定性が低い酵素であるアルカリホスファターゼを標識した抗体や蛍光タンパクを標識した抗体では、アフィニティ精製時に使用される酸性溶離液の影響を受け、酵素や蛍光タンパク質が失活するので、適応できない。また、SH 標識の場合は、還元操作によって抗体のFc 部が還元の影響を受けている可能性が高く、適応は難しいと思われる。




2. Alkaline Phosphatase Labeling Kit (ALP 標識キット)
1) 標識方法
 操作上の注意点など詳細については、取り扱い説明書をご参照いただきたい。なお、キットの取り扱い説明書は小社HP からダウンロードが可能である。

2) ELISA 例
 ELISA プレートに固定化したビオチン標識BSA を、各種方法で標識した抗ビオチン抗体を用いて検出感度を比較した(図12)。Alkaline Phosphatase Labeling Kit-SH(Code: LK13)を用いて標識した抗体は、アミノ基を対象に標識した抗体や他社キットを用いて作製したALP 標識抗ビオチン抗体と比較しても、より高感度の検出が可能であることが分かる。
 アミノ基標識よりSH 標識の方がより高感度の検出が可能である理由としては、ALP の分子量が大きいので抗体認識部位近くのアミノ基に標識されたALP が抗体認識機能に阻害を起こしているためと考えられる。




X. 抗体への蛍光色素標識方法

1. 蛍光色素を用いた多重染色の問題点

 多重染色法は、同一の試料で複数の分子を同時に検出しその局在を比較することができるという有用な手法である。励起・蛍光波長の異なる二種類以上の蛍光色素を使用すれば、モノクロCCD カメラや共焦点レーザー顕微鏡などで蛍光をデジタルデータとして取り込んだ後、緑、赤、青の擬似カラーを付けた画像を重ね合わせる(マージする)ことも可能である。
 ただし、多重染色を間接法で行う場合は、二次抗体の非特異的な吸着を防止するために以下のことに注意しなければならない。



1)

一次抗体として同一の動物種で作製したものを同時に使用できない(図A)。

2)

二次抗体は一次抗体を作製した動物とは別種の動物で作られたものを用意しなければならない(図A, B)。

3)

二次抗体は多重染色用のもの(交差反応※1 を防ぐために他の動物の血清で吸着処理※2 したもの)を使用しなければならない( 図C, D)。

4)

サンプルの細胞腫と同一の動物種で作製した一次抗体は、使用できない(図E, F)。


※ 1

交差反応とは
二次抗体は一次抗体のホスト動物種に反応する抗体を選ぶが、その二次抗体が他の動物種に対しても多少反応してしまう。これを交差反応と呼ぶ。交差反応の影響を抑える方法の一つとして、吸着処理という方法がある。

 


※ 2

吸着処理とは
予め交差反応を示す可能性のある動物の血清を固定化したビーズを充填したカラムに二次抗体溶液を添加し、それらの血清と反応する抗体をあらかじめ除く処理のこと。





2. 多重染色における直接法の利点
 上記のような間接法同時染色の問題点は、多重染色を別々に行う手法やブロッキング剤を用いて解決する方法もあるが、直接標識法を用いれば簡単に解決することが可能である(図G)。また、操作数も格段に減るので、手間も簡素化することができるし、二次抗体の影響も回避できる。



3. 蛍光色素染色法
 蛍光色素標識キットとして、Fluorescein Labeling Kit - NH2, HiLyte FluorTM 555 / 647 / 750, ICG labeling Kit - NH2(Code:LK01, LK14 / LK15 / LK16, LK31) が小社から販売されているのでご活用いただきたい。
操作上の注意点など詳細については、取り扱い説明書をご参照いただきたい。なお、キットの取り扱い説明書は小社HP からダウンロードが可能である。


4. 蛍光顕微鏡観察例
 モノクローナル抗ラットI-A 抗原抗体(Serotec clone#MRC OX-6) 100 μg をFluorescein Labeling Kit - NH2 を用いてFluorescein を標識し、ラット下顎骨を染色した。



XI. 抗体への蛍光タンパク質標識方法

1. 蛍光タンパク質を標識する利点
 蛍光タンパク質がフルオレセインなどの低分子の蛍光色素に比べて優れている点を以下に示す。


蛍光タンパク質アロフィコシアニン(APC)は1 分子あたり6 個の発色団をもち、フィコエリスリン(R-PE)は
1 分子あたり30 個の発色団を含んでいるので、それぞれタンパク質1 分子あたりの蛍光強度が高い。


励起スペクトルの幅が広いため、種々の波長で励起が可能である。


他のタンパク質と結合しても、蛍光色素の特性が変化しない。

AllophycocyaninR-Phycoerythrin
 読み方アロフィコシアニンR- フィコエリスリン
 略記APCR-PE
 由来藍藻などの藻類に存在する水溶性の蛍光色素
 分子量約105,000約240,000
 特徴APC はHe-Ne レーザーの633 nm、またはKrイオンレーザーの647 nm が励起に適しており、660 nm 付近の赤色の蛍光を発する。
FITC やR-PE と異なり、Ar レーザーでは励起されない。
Ar レーザー488 nm で励起が可能。
その他、キセノンランプや水銀ランプでも適当なフィルターを用いて励起が可能。570 nm 以上のオレンジ色の蛍光を発する。
FITC とR-PE で二重染色すると、両者とも488 nm で励起でき、FITC は530 nm(緑色)、R-PE は570 nm 以上(オレンジ色)の蛍光を発する(一励起で2 つの蛍光を観察可能)。


2. 標識方法
 操作上の注意点など詳細については、取り扱い説明書をご参照いただきたい。なお、キットの取り扱い説明書は小社HP からダウンロードが可能である。


3. フローサイトメトリー例
 Anti-CD179a モノクロ― ナル抗体HSL-96 をR-Phycoerythrin Labeling Kit-NH2 (Code: LK23) を用いて蛍光標識した後、B-precursor ALL 細胞株HPB-NULL を染色し、フローサイトメトリーにより二次抗体を用いた間接法と比較した。直接法では間接法と比べ、陰性画分のバックグラウンドが低く、ほぼ同等の蛍光強度を示し、直接法で標識した抗体においても十分な検出反応を行うことが可能である。


図16


a)

直接法
PE- 標識HSL-96(R-PE Labeling Kit - NH2)

b)

直接法
PE- 標識IgG コントロール

c)

二次抗体法( 間接法)
精製HSL-96 + PE 標識二次抗体

d)

二次抗体法( 間接法)
IgG コントロール + PE 標識二次抗体

( データ提供: 国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部 清河信敬先生 )
( HSL96 抗体提供: 東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野 烏山一先生)



4. トラブルシューティング
1) アルカリホスファターゼや蛍光タンパク質標識抗体の精製方法
 アルカリホスファターゼ標識抗体や蛍光タンパク標識抗体は、アフィニティカラムによる精製で使用される酸性溶離液によって、酵素や蛍光タンパク質が失活するため、アフィニティカラムによる精製法は使用できない。したがって、これらの標識抗体を精製するには、中性条件下のゲル濾過などで精製する必要がある。ただし、抗体の分子量と未反応の酵素もしくは蛍光タンパク質の分子量には大差がないので、非常に長いカラムを使用する必要がある。また、精製の回収率等を考慮すると、ゲル濾過による精製には多くの標識抗体が必要であり、50 〜200 μg という少量の抗体を標識することを目的とした小社キットに適した方法とはいえない。
 反応性を保持した未反応物が原因となるバックグラウンドの上昇が観察される場合は、標識操作の際、活性反応物の濃度を薄めて反応に使用することによって、バックグラウンドの上昇を抑える事ができる可能性がある。

例)R-Phycoerythrin Labeling Kit-NH2 (Code: LK23)の場合

【取扱説明書の操作方法】

操作5

Reaction Buffer 10 μl をNH2-Reactive R-Phycoerythrin に加え、よく溶解する。

操作6

NH2-Reactive R-Phycoerythrin を含む溶液をIgG が濃縮されているFiltration Tube の膜フィルター上に加える。

上記の操作を以下のように変更する。
【バックグラウンドの上昇が観察される場合の操作方法】

操作5

Reaction Buffer 20 μl をNH2-Reactive R-Phycoerythrin に加え、よく溶解する。

操作6

NH2-Reactive R-Phycoerythrin を含む溶液10 μl をIgG が濃縮されているFiltration Tube の膜フィルター上に加える。


XU. Fab' ヘのアルカリホスファターゼ標識方法

1. Fab’ フラグメントの利用について
 ウサギなどのIgG をペプシンで消化すると、Fc 部分が消化されて、多くの場合抗体活性が損なわれないままF(ab')2 が得られる。F(ab')2 は還元すると2 つのFab' に切り離される。EIA において、Fab' を酵素で標識したものは、疎水性の強いFc 部が切り離されているので、IgG と比べて非特異吸着が低く抑えられ、かつ分子量も小さいので組織切片などにも浸透しやすいといった利点がある。このような理由から、非特異吸着を低く抑えたい実験系では、Fab’ フラグメントはIgG より好んで用いられる。Fab' は抗原結合部位の反対側のヒンジ部分にSH 基を持っているので、このSH 基を用いて酵素を標識することが可能である。




2. Fab' フラグメントを利用したアルカリホスファターゼ標識法
1) F(ab')2 の調製5)

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


lgG


ブタ胃ペプシン


緩衝液A、緩衝液B


Sephacryl S-200HR(GE ヘルスケア社製)

B.

操作

(1)

lgG 5 mg/0.5 ml を緩衝液A で透析する。

(2)

透析後の試料液にブタ胃ペプシン0.1 〜 0.2 mg を溶解し、37℃ で15 〜 20 時間インキュベートする。

(3)

pH を7 に調整して、Sephacryl S-200HR で、緩衝液B を溶離液にして、流速0.35 ml/min でゲル濾過する。

(4)

F(ab')2 画分をとり、濃縮する。280 nm における吸光度を測定し、100 mg/ml のアジ化ナトリウムを1% (v/v) 添加して保存する。

(5)

MW=92,000、 ε280 nm=1.48 g-1・L・cm-1 を用いて濃度を算出する。
タンパク質濃度(mg/ml)={A280 nm/(1.48 × MW)} × MW=A280 nm/1.48 またはモル濃度(mol/l)= A280 nm/(1.48×MW) に基づいて計算する。




IgG のペプシンによる消化時間は、動物種によリ異なる。例えば、ウサギIgG では6 時間であるが、ヤギでは1 〜 2日である。ラット・マウスのlgG 2b は15 〜 30 分で完全に減成され、免疫反応性は全く残らない3)。

2) Fab' の調製2,5)

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


F(ab')2


緩衝液C、緩衝液D


緩衝液A、緩衝液B


0.1 mol/l 2- メルカプトエチルアミン溶液(11.36 mg の2- メルカプトエチルアミン塩酸塩を緩衝液D 1 ml に溶解する。)

B.

操作

(1)

0.1 〜 3 mg のF(ab')2 を含む緩衝液C 0.45 ml に、2- メルカプトエチルアミン溶液50 μl を添加する。

(2)

37℃ で90 分間インキュベートする。

(3)

Ultrogel AcA44 カラムで、緩衝液D を用いて流速0.35 ml/min でゲル濾過する。

(4)

Fab' 画分をとり280 nm の吸光度を測定し、MW=46,000、ε 280 nm=1.48 g-1・L・cm-1 に基づいて濃度を算出する。


3) Fab' ヘのアルカリホスファターゼ標識4)
3)-1. 仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼへのマレイミドの導入

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼ


緩衝液E、緩衝液F


EMCS( 製品コード: E018)


Sephadex G-25(GE ヘルスケア社製)

B.

操作

(1)

アルカリホスファターゼ(2 mg)/ 緩衝液E 0.5 ml を同じ緩衝液E を外液にして透析する。

(2)

試料液にEMCS(0.17 mg)/DMF 10 μl を添加して、30℃ で30 分間インキュベ−トする。

(3)

Sephadex G-25 カラム(1 × 45 cm) で、緩衝液F を溶離液にしてゲル濾過し、濃縮する。

(4)

マレイミド量とアルカリホスファターゼ活性を測定する。


3)-2. マレイミド導入アルカリホスファターゼのFab' への標識

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


マレイミド導入アルカリホスファターゼ


Fab'


緩衝液D, 緩衝液G, 緩衝液F


10 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン( 緩衝液D 溶液)


アジ化ナトリウム

B.

操作

(1)

マレイミド導入アルカリホスファターゼ1 mg(10 nmol) を緩衝液F 0.25 ml に溶解し、Fab' 2.3 mg (50 nmol)/ 緩衝液D 溶液0.25 ml を混合する。

(2)

4℃ で20 時間インキュベートする。

(3)

10 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン溶液10 μl を添加し、Ultrogel AcA44 カラムでゲルろ過する。溶離液には緩衝液G を用い、流速0.35 ml/min で溶離する。

(4)

アルカリホスファターゼ活性(3)-4.) を測定し、100 mg/ml BSA と100 mg/ml のアジ化ナトリウムをそれぞれ1% (v/v)添加し保存する。


3)-3. マレイミドの定量法5)
EMCS (Code: E018) やGMBS(Code: G005) によりアルカリホスファターゼに導入されたマレイミドの導入数は、以下の方法で算出する。

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


マレイミド導入アルカリホスファターゼ


緩衝液C


0.5 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン溶液
(0.1 mol/l の2- メルカプトエチルアミン塩酸塩溶液10 μl と50 mmol/l EDTA (pH6.0) 2 ml を混合し調製する。
50 mmol/l EDTA 溶液100 ml 調製には小社2NA(Code: N001) 1.86 g を溶解し1 mol/l NaOH でpH6.0 に調整する。)


10 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン( 緩衝液D 溶液)


5 mmol/l 4-PDS 溶液(4-PDS (Code: P017)1.1 mg を緩衝液B 1ml に溶解する)

B.

操作

(1)

マレイミドを導入したアルカリホスファターゼ( 約10 μmol/l)/ 緩衝液C 0.45 ml に、0.5 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン溶液50 μl を添加する。
コントロール( 全発色) として、緩衝液C 0.45 ml に0.5 mmol/l 2- メルカプトエチルアミン溶液50 μl を添加したものを用意し、同様に以下の操作を行う。

(2)

30℃ で20 分間インキュベートする。

(3)

5 mmol/l の4-PDS 溶液20 μl 加え、30℃ で10 分インキュベートし、324 nm の吸光度を測定する。残存チオール量に相当した4- チオピリドン量(ε324 nm=19,800 M-1・cm-1) が生成されるため、コントロールとの吸光度差が導入されたマレイミド基量に相当する。


3)-4. アルカリホスファターゼ活性の測定
比色法および蛍光法があるが、ここでは最も一般的な比色法として、pNPP(4- ニトロフェニルリン酸) による方法を紹介する2)

A.

試薬( 緩衝液については緩衝液一覧を参照)


緩衝液H


5.5 mmol/l pNPP/ 緩衝液H


1 mol/l NaOH

B.

操作

(1)

酵素溶液を、緩衝液H で希釈する。

(2)

酵素希釈溶液0.5 ml を30 〜 37℃ で5 分間インキュベートする。

(3)

5.5 mmol/l pNPP/ 緩衝液H 0.5 ml を添加する。

(4)

30 〜 37℃ で10 〜 100 分間インキュベートする。

(5)

1 mol/l NaOH 0.5 ml を加えて、反応を停止させ、405 nm の吸光度を測定する。予め既知濃度のアルカリホスファター ゼを用いて同一法で活性を測定し、作製しておいた酵素濃度- 吸光度の検量線から定量する。また、酵素量は、280 nm の吸光度より、ε280 nm=0.99 cm2・mg-1 とMW=100,000 よリ算出する。
タンパク質濃度(mg/ml)={A280 nm/ (0.99 × MW)} × MW=280 nm/ 0.99 またはモル濃度(mol/l)=280 nm / (0.99 × MW) に 基づいて計算する。


<緩衝液一覧>
緩衝液の組成の一覧を下記に示す。

緩衝液A :

0.1 mol/l 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5、0.1 mol/lNaCl を含む)

緩衝液B :

0.1 mol/l リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)

緩衝液C :

0.1 mol/l リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)

緩衝液D :

0.1 mol/l リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0、 5 mmol/lEDTA を含む)
(EDTA-2Na 塩を緩衝液作製途中で終濃度が5 mmol/l となるよう加え、希釈してリン酸濃度が0.1 mol/l にする。すなわち100 ml 調製には小社2NA(Code: N001) を186 mg 用いる)

緩衝液E :

50 mmol/l ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH7.6、1mmol/l MgCl2、0.1 mmol/l ZnCl2 を含む)

緩衝液F :

0.1 mol/l Tris-HCl 緩衝液(pH7.0、1 mmol/l MgCl2、0.1 mmol/l ZnCl2 を含む)

緩衝液G :

10 mmol/l Tris-HCl 緩衝液(pH6.8、0.1 mol/l NaCl、1 mmol/l MgCl2、0.1 mmol/l ZnCl2 を含む)

緩衝液H :

0.1 mol/l グリシン-NaOH 緩衝液(pH10.3、1 mmol/l MgCl2、0.25 g/l 卵白アルブミンを含む)


XV. 関連技術紹介

1. 標識前の抗体精製法
 市販の抗体には、不純物混入や失活を予防するため、安定化剤が含まれていることがある。代表的な安定化剤は、アジ化ナトリウムやBSA, ゼラチンなどである。小社の標識キットでは、低分子のアジ化ナトリウムは、取扱説明書にある最初のフィルトレーションチューブ上の洗浄工程で除去が可能である。しかし、BSA やゼラチンといった高分子は、最初のフィルトレーションチューブ上の洗浄工程で除くことはできない。このような安定化剤が含まれる抗体標品を標識する場合、抗体への標識を阻害するので、予め安定化剤を除去する必要がある(BSA 含量が1% 程度でも、除去する必要がある)。

1)BSA の除去方法

(1)

試薬


IgG Purification Kit-A( もしくはG) (Code: AP01 もしくはAP02
市販の抗体 200 μg

(2)

精製方法


IgG Purification Kit 添付の取扱説明書に従って、精製を行う。

2) ゼラチンの除去方法 
 A, B いずれかの方法で除去する。

A. コラーゲナーゼ(Collagenase)によるゼラチン分解



(1)

試薬


コラーゲナーゼ(Sigma, #C7826) 3.5 CDU/ml 希釈溶液
IgG Purification Kit-A( もしくはG) (Code: AP01 もしくはAP02)
市販の抗体 200 μg
 

(2)

精製方法


0.2% ゼラチンを含む200 μg/ml IgG 溶液 1 ml に酵素処理用緩衝液 (100 mmol/l HEPES,
pH7.4, 0.36 mmol/l CaCl2 含有) 420 μl と酵素処理用緩衝液で調製した 3.5 CDU/ml コラーゲ
ナーゼ希釈溶液 80 μl を加えて混合する。


37℃、3 時間インキュベートした後、IgG Purification Kit-A( もしくはG) を用いてIgG を単離する。
 


IgG Purification Kit では、抗体を固定化担体に保持させる際の抗体溶液量を一回当たり200 μl
としている。しかし、上記操作でコラーゲナーゼ処理した抗体溶液量は、約1.5 ml となるため、
IgG を担体に保持させる操作を8 回(200 μl × 7, 100 μl × 1)に分けて行う。


上記の方法で得られる抗体の回収率:45 〜 50%


図18

ゼラチン除去精製前後のSDS-PAGE
 1: ゼラチン含有IgG 溶液
 2: 精製後のIgG 溶液

B. 300K 限外ろ過チューブを用いたゼラチン除去




(1)

試薬


300K フィルトレーションチューブ
(Pall 社 ナノセップ遠心ろ過デバイス(製品コード:OD300C33)
IgG Purification Kit-A( もしくはG) (Code: AP01 もしくはAP02)
市販の抗体 200 μg
 

(2)

精製方法


0.1% ゼラチンを含む200 μg/ml IgG 溶液 1 ml を300K フィルトレーションチューブ 2 本
に分けて限外ろ過を行う(200 μl × 2, 100 μl × 1, 13,500 x g)。


その後、回収溶液500 μl をIgG Purification Kit-A( もしくはG) を用いてIgG を単離する。
 


回収溶液500 μl に対し、IgG Purification Kit のWashing Buffer 50 μl を添加し、精製を行う。
ゲルへの吸着操作は5 回繰り返す。


上記の方法で得られる抗体の回収率:35 〜 45%


図19

ゼラチン除去精製前後のSDS-PAGE
 1: IgG
 2: ゼラチン含有IgG 溶液
 3: 300K 限外濾過のみのIgG 溶液
 4: 300K 限外濾過+ IgG Purification Kit - G で精製後のIgG 溶液


XIV. 関連製品

【IgG 標識キット】
製品名
標識できるもの
品コード
検出
[ λex, λem]
備考
Biotin Labeling Kit-NH2
ビオチン
( アビジン)
初めてビオチン標識をする方におすすめ
Biotin Labeling Kit-SH
ビオチン
アミノ基標識で上手くいかない系で使用すると感度改善が期待できる場合もある
Peroxidase Labeling Kit-NH2
酵素
(基質)
初めてHRP 標識する方におすすめ
Peroxidase Labeling Kit-SH
酵素
アミノ基標識で上手くいかない系で使用すると感度改善が期待できる場合もある
Alkaline Phosphatase Labeling Kit-NH2
酵素
初めてALP 標識する方におすすめ
Alkaline Phosphatase Labeling Kit-SH
酵素
アミノ基標識より高感度
Fluorescein Labeling Kit- NH2
蛍光色素
蛍光
[500, 525]
初めて蛍光標識する方におすすめ
HiLyte FluorTM 555 Labeling Kit-NH2
蛍光色素
蛍光
[555, 570]
Cy3 と類似した蛍光特性を持つ色素
HiLyte FluorTM 647 Labeling Kit-NH2
蛍光色素
蛍光
[655, 670]
Cy5 と類似した蛍光特性を持つ色素
HiLyte FluorTM 750 Labeling Kit-NH2
蛍光色素
蛍光
[760, 780]
Cy7 と類似した蛍光特性を持つ色素
ICG Labeling Kit-NH2
蛍光色素
蛍光
[774, 805]
in vivo イメージング用蛍光色素
Allophycocyanin Labeling Kit-NH2
蛍光タンパク質
蛍光
[650, 660]
647 nm(Kr イオンレーザー) で励起可能
Allophycocyanin Labeling Kit-SH
蛍光タンパク質
アミノ基標識で上手くいかない系で使用すると感度改善が期待できる場合もある
R-Phycoerythrin Labeling Kit-NH2
蛍光タンパク質
蛍光
[564, 575]
488 nm(Ar レーザー) で励起可能
蛍光色素より高感度
R-Phycoerythrin Labeling Kit-SH
蛍光タンパク質
アミノ基標識で上手くいかない系で使用すると感度改善が期待できる場合もある


【IgG 精製キット】
IgG Purification Kit - A抗体の種に応じて回収率の高い方を選択する
IgG Purification Kit - G抗体の種に応じて回収率の高い方を選択する


【ビオチン化試薬】
製品名
対象官能基
品コード
備考
Biotinylation Kit (Sulfo-OSu)
アミノ基
1 〜 5 mg のタンパク質や抗体をビオチン化するのに適したキット
Biotin-OSuAC(アミノカプロン酸)の数でスペーサー長さを調整する。
水に溶けにくいので、DMSO などの有機溶剤に溶解後、緩衝液で希釈する。
Biotin-AC5-OSu
Biotin-(AC5)2-OSu
Biotin-Sulfo-OSuAC(アミノカプロン酸)の数でスペーサー長さを調整する。
水に溶け易いので、緩衝液で溶解可能。
分解しやすいので、用時調製する。
Biotin-AC5 Sulfo-OSu
Biotin-(AC5)2 Sulfo-OSu
Biotin-PE-maleimide
SH 基
AC(アミノカプロン酸)の数でスペーサー長さを調整する。
Biotin-PEAC5-maleimide
Biotin-hydrazide
アルデヒド基
カルボン酸
アルデヒド基、カルボキシル基へのビオチン導入剤、AC(アミノカプロン酸)の数でスペーサー長さを調整する。
Biotin-AC5-hydrazide
Biotin-(AC5)2-hydrazide

【発色基質】
製品名
対象官能基
品コード
備考
DAB
HRP
過酸化水素、HRP 存在下で免疫染色などに使用。
TMBZTMB と同一構造。水溶性は低い。過酸化水素、HRP 存在下
で青緑色に発色。
TMBZ・HClTMBZ の塩酸塩タイプ。水溶性は高い。
SAT-3水溶性が高く、TMB と同様に使用することができる。


【Fab' 標識関連試薬】
製品名
品コード
備考
EMCSマレイミド基導入試薬
GMBSマレイミド基導入試薬
2NA(EDTA・2Na)キレート剤。SH 基安定化の目的で使用。
4-PDSSH 基比色定量試薬
※小社では他にもスペーサー長の異なるマレイミド導入試薬をご用意している。詳しくはHP をご参照いただきたい。


XV. 参考文献


1)

J. Hirota, S. Shimizu, "Introduction of protein labeling kit", Bull. Natl. Inst. Anim. Health, 2005, 111, 37.

2)

石川栄治, 河合忠, 宮井潔, 酵素免疫測定法 第3 版, 医学書院, 1987.

3)

P. Tijssen 著, 石川栄治訳, 生化学実験法11 エンザイムイムノアッセイ, 東京化学同人, 1989.

4)

P. Cuatrecasas, I. Parikh, "Adsorbents for affinity chromatography. Use of N-hydroxysuccinimide esters of agarose", Biochemistry, 1972, 11(12), 2291.

5)

E. Ishikawa, M. Imagawa, S. Hashida, S. Yoshitake, Y. Hamaguchi, T. Ueno, "Enzyme-labeling of antibodies and their fragments for enzyme immunoassay and immunohistochemical staining", J. Immunoassay, 1983, 4, 209.


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